# ネットワークゲームを作ろう ネットワーク機能を使って、教室の中で友だちとゲームをするプログラムを作ってみよう。題材は、**ch_pingpong** で作ったピンポンゲームを対戦型に拡張したものである。 作成したゲームの画面を示す。画面は左側と右側のプログラムで異なるが、内容はほとんど同じであるため、左側のプログラムを例に説明する。ピンポンゲームと変わらない部分については、**ch_pingpong** を参照してほしい。 {{:pasted:20180103-163017.png?300}} {{:pasted:20180103-163027.png?300}} ## 壁を作る(ステップ1) 最初に、ゲームに登場するオブジェクトを画面に置く。上下にある長方形は、ボールを跳ね返す壁である。左の小さいほうの長方形はボールを打ち返すパドルである。大きいほうの長方形は、パドルでボールを打ち返せなかったことを知るための壁である。ボールがこの壁にぶつかると、ゲームオーバーになる。 {{:pasted:20180103-163057.png}} 次のプログラムでは、4個の長方形を作成している。プログラムを簡単にするために、**線の太さ**で太さ20の線を描くことで長方形とした。続いて、上壁を作ってから複製して下壁を作り、続いて左壁とパドルを作っている。 // 壁を作る(ステップ1) かめた=タートル! 作る。 かめた!(緑)線の色 20 線の太さ。 壁=かめた!550 歩く 図形を作る -200 200 位置。 壁!作る -200 -220 位置。 かめた!90 左回り。 左壁=かめた!(黄)線の色 440 歩く 図形を作る -210 -230 位置。 パドル=かめた!(青)線の色 120 歩く 図形を作る -190 -210 位置。 ## パドルを動かす(ステップ2) 画面にボタンを表示して、パドルを上下に動かせるようにする。次のプログラムでは、画面の左側に「上ボタン」と「下ボタン」という名前の2つのボタンを表示し、ボタンが押されるか上下の矢印キーが押されたときにパドルを上下に50ずつ移動させている。 {{:pasted:20180103-163117.png}} // パドルを動かす(ステップ2) 上ボタン=ボタン! "上" "UP" 作る -380 50 位置。 下ボタン=ボタン! "下" "DOWN" 作る -380 0 位置。 上ボタン:動作=「パドル! 0 50 移動する」。 下ボタン:動作=「パドル! 0 -50 移動する」。 ## ボールの動きを定義する(ステップ3) 「かめた」はボールの役割をする。毎回少しずつ違った位置からゲームが始まるように、横の位置は左右の中央で、縦の位置は乱数を使い、-149〜150の範囲でランダムになるようにした。壁にぶつかると、自然な角度で跳ね返る。 // ボールの動きを定義する(ステップ3) かめた!ペンなし 45 向き。 かめた!0(乱数(300)-150)位置。 かめた:衝突=タートル:跳ね返る。 {{:pasted:20180103-163139.png}} ## 通信を準備する(ステップ4) ゲームをする2つの画面の間では、ボールがどのような状態にあるかという情報を、お互いに交換して合わせておく必要がある。たとえば、ひとつの画面でパドルと衝突して跳ね返ったら、もうひとつの画面でも同様に向きを変える必要がある。 そこで、自分のボールの状態をサーバーに書き込む「書き込み」というメソッドと、相手のボールの状態をサーバーから読み出す「読み出し」というメソッドを定義することにした。 次のプログラムで、「書き込み」の中では、現在のボール(「かめた」)から位置と向きの情報を取り出し、それぞれ「x」、「y」、「t」という名前でサーバーに保存している。「読み出し」の中では、サーバーから位置と向きの情報「x」、「y」、「t」を取り出し、ボール(「かめた」)にセットしている。 ステップ4からステップ6までを実行するには、サーバーと相手の画面が必要になる。詳しくはステップ7で説明する。 // 通信を準備する(ステップ4) かめた:書き込み=「  サーバー!"x" (かめた!横の位置?) 書く。  サーバー!"y" (かめた!縦の位置?) 書く。  サーバー!"t" (かめた!向き?) 書く 」。 かめた:読み出し=「  x=サーバー!"x" 読む。  y=サーバー!"y" 読む。  t=サーバー!"t" 読む。  かめた!(x)(y)位置 (t)向き 」。 ## 通信しながらボールを動かす(ステップ5) ステップ5は、このプログラムの中心的な部分である。行っている処理は画面上のボールを動かすことだが、ボールは両方の画面で同じように表示される必要があるため、サーバーを介した通信を行うことで、ボールの状態をお互いに合わせている。 次のプログラムでは、最初に、サーバーに接続する。続いて、ステップ4で定義した「書き込み」を実行して、ボールの位置をサーバーに書き込む。そしてタイマーを作成する。ここまでが、プログラムを開始するときの動作である。 続いて、ゲームの処理を行う。本質的な動作は次の1行で記述できる。つまり、タイマーでボール役の「かめた」を前進させる動作である。 時計!「かめた!10 歩く」実行。 ここでは、他の画面とボールの状態を合わせるために、最初に「読み出し」でサーバーから相手のボールの状態を取得して、ボールを正しい位置に置く。続いてボールを移動し、移動後の新しい状態を「書き込み」でサーバーに書き込んでいる。 // 通信しながらボールを動かす(ステップ5) サーバー!"localhost" 接続。 かめた!書き込み。 時計=タイマー! 作る 60秒 時間 0.2秒 間隔。 時計!「  かめた!読み出し。  かめた!10 歩く。  かめた!書き込み。 」実行。 ## ゲームの勝敗を判定する(ステップ6) 最後に、タイマーが終了するまでゲームを続けられた場合には「ゲームクリア」というメッセージを表示する。この部分はピンポンゲームと同じであるため、詳しくは**ch_pingpong** を参照されたい。 // ゲームの勝敗を判定する(ステップ6) ゲームクリア=はい。 左壁:衝突=「:ゲームクリア=いいえ。時計! 中断」。 時計!「   「ゲームクリア==はい」! なら「     ラベル! "ゲームクリア! "作る (青)文字色。   」そうでなければ「     ラベル! "ゲームオーバー! "作る (赤)文字色。   」実行。 」最後に実行。 ステップ1からステップ6までの全体のプログラムを掲載しておく。これは左側の画面で実行するプログラムである。 // 壁を作る(ステップ1) かめた=タートル! 作る。 かめた!(緑)線の色 20 線の太さ。 壁=かめた!550 歩く 図形を作る -200 200 位置。 壁!作る -200 -220 位置。 かめた!90 左回り。 左壁=かめた!(黄)線の色 440 歩く 図形を作る -210 -230 位置。 パドル=かめた!(青)線の色 120 歩く 図形を作る -190 -210 位置。 // パドルを動かす(ステップ2) 上ボタン=ボタン! "上" "UP" 作る -380 50 位置。 下ボタン=ボタン! "下" "DOWN" 作る -380 0 位置。 上ボタン:動作=「パドル! 0 50 移動する」。 下ボタン:動作=「パドル! 0 -50 移動する」。 // (続き) // ボールの動きを定義する(ステップ3) かめた!ペンなし 45 向き。 かめた!0(乱数(300)-150)位置。 かめた:衝突=タートル:跳ね返る。 // 通信を準備する(ステップ4) かめた:書き込み=「  サーバー!"x" (かめた!横の位置?) 書く。  サーバー!"y" (かめた!縦の位置?) 書く。  サーバー!"t" (かめた!向き?) 書く 」。 かめた:読み出し=「  x=サーバー!"x" 読む。  y=サーバー!"y" 読む。  t=サーバー!"t" 読む。  かめた!(x)(y) 位置(t)向き 」。 // 通信しながらボールを動かす(ステップ5) サーバー!"localhost" 接続。 かめた!書き込み。 時計=タイマー! 作る 60秒 時間 0.2秒 間隔。 時計!「  かめた!読み出し。  かめた!10 歩く。  かめた!書き込み。 」実行。 // ゲームの勝敗を判定する(ステップ6) ゲームクリア=はい。 左壁:衝突=「:ゲームクリア=いいえ。時計! 中断」。 時計!「   「ゲームクリア==はい」! なら「     ラベル! "ゲームクリア! "作る (青)文字色。   」そうでなければ「     ラベル! "ゲームオーバー! "作る (赤)文字色。   」実行。 」最後に実行。 ## プログラムを実行する(ステップ7) この節で作成しているプログラムは、サーバーや相手の画面と協調して 動作するため、単体では動かない。実行するための手順を説明する。 まず、サーバーを起動する。サーバーはどのコンピュータで起動しても よいが、ここでは左側の役割をする画面を実行するコンピュータで動か すことにする。サーバーを起動するには、ドリトルの編集画面(プログ ラムを入力する画面)を開き、右側にある**server**をマウスでチェッ クする。すると、サーバーのウィンドウが画面に表示される。サーバー の画面自体は使わないので、開いたまま放っておく。 次に、右側の画面を実行するために、もうひとつドリトルの画面を起動 する。右側の画面で実行するプログラムを示す。左側の画面との違いは、 画面上のパドルなどが左右逆に配置されていることと、ボールの初期位 置をサーバーに設定しないこと、そしてボールが両方の画面で自然な位 置に表示されるように、ボールの位置を100だけ左にずらしてサーバー に書き込んでいることである。 このプログラムを左側の画面と同じコンピュータで実行する場合は変更 の必要はないが、別のコンピュータで実行する場合には、左側の画面の コンピュータを実行しているコンピュータのホスト名またはIPアドレス を調べて、プログラム中の「localhost」の部分を書き換える必要があ る。 // 壁を作る(ステップ1) かめた=タートル! 作る。 かめた!(緑)線の色 20 線の太さ 180 右回り。 壁=かめた!550 歩く 図形を作る 200 200 位置。 壁!作る 200 -220 位置。 かめた!90 右回り。 左壁=かめた!(黄)線の色 440 歩く 図形を作る 210 -230 位置。 パドル=かめた!(青)線の色 120 歩く 図形を作る 190 -210 位置。 // (続き) // パドルを動かす(ステップ2) 上ボタン=ボタン! "上" "UP" 作る 230 50 位置。 下ボタン=ボタン! "下" "DOWN" 作る 230 0 位置。 上ボタン:動作=「パドル! 0 50 移動する」。 下ボタン:動作=「パドル! 0 -50 移動する」。 // ボールの動きを定義する(ステップ3) かめた! ペンなし。 かめた!0(乱数(300)-150)位置。 かめた!45 向き。 かめた:衝突=タートル:跳ね返る。 // 通信を準備する(ステップ4) かめた:書き込み=「  サーバー!"x" (100+(かめた!横の位置?)) 書く。  サーバー!"y" (かめた!縦の位置?) 書く。  サーバー!"t" (かめた!向き?) 書く 」。 かめた:読み出し=「  x=サーバー!"x" 読む。  y=サーバー!"y" 読む。  t=サーバー!"t" 読む。  かめた!(x-100)(y)位置(t)向き 」。 // 通信しながらボールを動かす(ステップ5) サーバー!"localhost" 接続。 //かめた!書き込み。 時計=タイマー! 作る 60秒 時間 0.2秒 間隔。 時計!「  かめた!読み出し。  かめた!10 歩く。  かめた!書き込み。 」実行。 // ゲームの勝敗を判定する(ステップ6) ゲームクリア=はい。 左壁:衝突=「:ゲームクリア=いいえ。時計! 中断」。 時計!「   「ゲームクリア==はい」! なら「     ラベル! "ゲームクリア! "作る (青)文字色。   」そうでなければ「     ラベル! "ゲームオーバー! "作る (赤)文字色。   」実行。 」最後に実行。